前回の「スマートな去り方の極意」を経て、無事に社内公募でのキャリアチェンジを果たした後、実際にどんな現実が待っていたのか。給料は本当に下がらなかったのか、専門性ゼロからのスタートはどれほど大変だったのか。

この記事では、システムエンジニアからハードウェアエンジニアへ異動した後の、リアルな答え合わせをお伝えします。

※本記事は、JTC脱出の裏ルートを解説する「社内公募シリーズ」の第6回です。シリーズの全体像やメリット・デメリットについては、まず【第1回:まとめ編】をご覧ください。

異業種への社内公募・異動後のリアルな変化

給与はどうなったか?(ルール上の据え置きと実際の評価)

社内公募による異動後は、給料については据え置き以上というルールでしたが、異動直後の考課はほんの少し上がりました。

私が異動したのがちょうど前任者が退職するタイミングだったため引継ぎもろくにできず、最初の数ヶ月は手探りで苦労しました。ただ、その苦労が結果的に評価につながったとのことで、意外な収穫でした。

給料が下がらないという、FIREを目標とする上で最も重要な点はクリアしました。

パソコン作業からの解放。現場主義への180度転換

ソフトウェアとは全く異なる、モノづくりに近い部署でのハードウェアエンジニアの仕事をすることになりました。

仕事内容については募集要項を読んで、面接の際にも今の上司から説明を受けた上で、率直に言って「微妙だな」と思う部分もありました。面接では

上司

何々と何々と何々のドキュメントを作成してもらいます。

みたいなことを言っていて、そのあたりは正直つまらなそうと感じていました。

書類作成係みたいな感じで、雑務を押し付けられてる感じがしました。(笑)

ただ、ふたを開けてみると書類作成係の仕事もやはりありましたが、開発や実験のような業務もありそのあたりは合っていると感じています。結果的には割と面白くてやりがいがあるとは思っています。

【キャリアチェンジの場合、異動後の仕事内容をイメージできない?】

キャリアチェンジする場合は、事前によく調べたとしても異動後の仕事内容を正確にイメージすることは難しいのではないかと思います。

特に今回の場合だと、モノづくりの仕事とソフトウェアは違いすぎていて、募集要項を読んでも面接で話を聞いても正確には理解できないことが多くありました。逆に異動後の上司に、前職のシステムエンジニアの仕事内容を説明しても全くピンと来てない様子でした。

思っていた仕事内容と違う!

となるリスクはゼロではないですが、限られた時間や情報からすべてを分かり切ることはできないので、リスクを承知の上で決断してしまうのがいいのかもしれません。

私の場合はシステムエンジニアを辞めたいという気持ちが強かったので、多少微妙に感じましたが「えいや!」で進めました。

そして、職場での働き方はかなり変化しました。180度違うくらいの変化です。

項目異動後
(現在の職場)
異動前
(システムエンジニア)
働き方の基本現場主義(製造現場へ頻繁に行く)デスクワークのみ
肉体的な負担適度に体を動かす運動不足
「席にいない」の意味= 現場で仕事をしている= 仕事をしていない(サボり)

システムエンジニアの仕事は基本デスクで行うので、「席にいない=仕事していない」ということになり、席を外しづらい雰囲気がありました。そのため、必然的に短い休憩を除いてずっとデスクにいることになります。個人的には、この家畜や囚人のような一つ所に拘束され自由を奪われた状態が嫌でしたので、改善されたことになります。

システムエンジニアの仕事を否定するつもりは全くありませんが、キャリアチェンジをすると働き方がこのように大きく変わることもあるということが分かりました。

「専門性ゼロ」の洗礼と、冷遇への合理的な割り切り

専門性ゼロの洗礼。「替えが効く人材」として扱われるシビアな現実

当然良いことばかりではありませんでした。キャリアチェンジした場合は知識ゼロからのスタートになります。専門知識を持っていないというのは、要は替えが効く人材なんですね。頭数としての意味しかないわけです。

そのため、初期の頃は上司の態度は冷たかったですね。

上司は他の部署の人とはニコニコしながら話します。相手はスキルや権限などの点で自分にはできない何かを持っているため、作業を依頼すれば引き受けてもらえるような良好な関係を保たないと仕事がやりにくくなるからだと思います。

一方で、私の場合はスキルや権限において完全に下位互換になるわけです。そのため、私には当たりが強かったり、遠慮なく雑務を振ってきたりします。替えが効く存在はこういう扱いを受けます。

上司をやってるだけあって、現状把握能力が高いんですね。そういう扱いをして仮に辞めてもまた代わりを採ればいいと計算高く考えたのだと思います。したたかですね。

ただ、こういう目にあっても仕方ないと割り切るのがいいんだと思います。多かれ少なかれ、不満はどうしても出てきます。私の場合はFIREが念頭にあるため、給料が下がらない(実際には少し上がった)だけでも十分好条件だと思って割り切りました。

どうしても我慢できないと感じた場合は、即転職でもいいと思います。ですが、なんだかんだ「もう無理」の状態になるまでには1,2年はかかるので、見極め期間だと思って割り切るのがやはりいいのではと思います。

ちなみに、社内公募による異動は在籍期間が一年以上という条件があったりしますので、次の異動はすぐにはできません。

異業種でも通用する「システムエンジニアの武器」と人間関係の真実

IQの高さと論理的思考力はどこへ行っても重宝される

キャリアチェンジすることでシステムエンジニアの長所も見えてきました。システムエンジニアの長所はズバリ「IQの高さ」だと思います。プログラムを書くにあたって、

  • バグがない
  • 処理効率がいい

といったコードを書くには高い論理的思考力が必要です。そのため、システムエンジニアは集団としてみると必然的にIQは高くなります。この部分はキャリアチェンジして未経験の仕事をする際にも生きてくると思います。

タイムリーな話ですが、最近ではAIを業務に取り入れる動きが盛んです。IQが高い人の方がAIなどの新しい技術の理解が早く、すぐに吸収して使いこなしていますね。

異動後の人間関係の真実。全員と仲良くすることはできないと割り切る

私は「INTJ」ということもあり、人間関係が苦手だったりします。前の職場でも合わない人はいましたし、今の職場でも意識して頑張りましたが合わない人はやはりいます。ただ、これは仕方ないと思っています。

何とかしようというより、変えられないこととして受け入れるのが良いと考えています。

SNSで総合商社のサラリーマンが職場の人間関係について愚痴を言っていたりします。年収が数千万円の優秀な人たちが集まる会社ですらそれです。地頭がよく、「コミュ力お化け」とも言われる人たちが集まっても人間関係の問題が生じるのなら、普通の会社だとあって当然と考えています。

【2:7:1の法則】

自己啓発本を読むと「2:7:1の法則」というのがよく出てきます。人間関係についての法則で、同僚が10人いたら自分との関係性は以下のようになります。

・2人とは何をやってもうまくいく
・7人とは頑張ればうまくいく
・1人とはどうやってもうまくいかない

良い悪いとは関係なく、自分とどうしても馬の合わない人が一定数いることになります。これは、社内公募による異動、社外転職のどちらでも事情は同じです。「全員が仲がいい職場はない」(あっても稀)。こう思って期待値を下げておくのも一案かと思います。

さらにその上で、キャリアチェンジした場合には

  • 自分より年下の社員の方が専門知識があり、年下に教えてもらう必要がある
  • 自分の方が後から入ったから、年下に敬語を使うべきか悩む

といった、人間関係を構築する上で(人によっては)少々悩みのある状態でスタートします。そのため、人間関係の課題を抱えやすいと言えるかもしれません。この点は留意してもいいと思います。

人間関係に課題が生じても「そういうもの」と捉えて、落ち込まないことが重要だと思います。

前の職場の同僚との関わり

私の場合は職場での人間関係が悪かったため、異動後は前の部署の人との関わりを持ちたくないと思っていました。結果的には以下の理由で顔を合わせる機会も無く済んでいます。

  • ビジネスの業界自体が全く異なる(仕事上の絡みゼロ)
  • 勤務地が変わった(物理的な遭遇ゼロ)

JTCはまだまだムラ社会なので自分から抜ける人間には冷たいです。しかし、私の場合は異動にあたって邪魔してきたり足を引っ張ってきたりといったくだらない嫌がらせをしてきた人間はほとんどいなかったです。

【補足:社内公募は過去を「引きずる」か?】

社外転職だと完全に「フレッシュ」な状態でスタートできる可能性が高いですが、社内公募による異動の場合はメールアドレスなどはそのまま使用するため、異動後にちょっと「引きずる」こともあるようです。ただ、自分の経験から言うと大筋では何も気にせずに新しいスタートを切れると思います。

まとめ

システムエンジニアからハードウェアエンジニアへの社内公募による異動は、給料が下がらないという最低条件をクリアしつつ、働き方も人間関係もほぼゼロからやり直すという、結果的に「小さな転職」のような経験になりました。

良かったこと・辛かったことを整理すると、次のようになります。

  • 給料は下がらず、むしろ評価されて上がった(FIREを目指す上で最重要の条件クリア)
  • 働き方は180度変わり、デスクワーク中心から現場主義になった
  • 専門性ゼロゆえの冷遇は一定期間避けられなかったが、割り切りで乗り越えられた
  • 人間関係は「コミュ力お化けと言われる総合商社の人ですら苦労する」という事実を踏まえ、期待値を下げることで、大きく崩れることなく乗り切れた

キャリアチェンジには当然リスクが伴いますが、社内公募という制度を使えば「給料を守りながら試せる」というのは大きな安心材料になります。行き詰まりを感じている方は、まず社内公募の求人一覧を眺めてみるところから始めてみてはどうでしょうか。

最後に:キャリアの主導権を握った「その先」へ

社内公募は、あくまで「環境をリセットし、自分の人生の主導権を握り直す」ための手段に過ぎません。

キャリアの主導権を握った先にある究極の目標は、「いつでも会社という理不尽なシステムから降りられる状態」を作ることです。会社に依存せず、真の自由を手に入れるための具体的な資産形成(FIRE)への道のりについては、ぜひこちらの記事も読んでみてください。

▶ シリーズの全体像・目次(まとめ編)に戻る