「JTCの肩たたき」と聞くと、誰もいない地下室に追いやられる「追い出し部屋」や、片道切符の「理不尽な転勤」といった、会社からの積極的な追い出し工作をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、私が現場で実際に見てきた「肩たたき(不要な社員の扱い)」の現実は、もっと静かで、陰湿で、そして極めて合理的です。
解雇規制が厳しい日本企業では、マズい社員に対してあからさまな退職勧奨をするリスクは取りません。その代わり、彼らを「他の優秀な社員を活かすためのダシ」にしたり、いざという時の「解雇のクッション」として飼い殺しにしたりします。
合理的な「飼い殺し」は、あなたのキャリアを無音で確実に削っていきます。いっそ追い出される方がまだマシであり、逆に自分から見切りをつけて出ていくのが唯一の正解です。
本記事では、JTCにおいてレールから外れた社員が「どのように利用され、搾取されるのか」という残酷な構造と、会社にしがみつく社員の異様な生態について解説します。
「追い出し部屋」はもう古い? 世間のイメージとJTCのリアル
世間が想像する「積極的な肩たたき」(左遷・転勤・退職勧奨)
「肩たたき」という言葉から連想されるのは、テレビドラマで描かれるような「窓際族」や「追い出し部屋」、あるいは生活基盤を無視した「理不尽な転勤」といった強硬手段です。
10年以上JTCにいますが、窓際はどちらかというと管理職のデスクがある特等席ですし、追い出し部屋のような無駄なスペースもないんですよね。昔はあったのでしょうか?
これらは会社側からの「お前はもう要らない」という明確で攻撃的なメッセージです。
かつての日本企業では、こうした心理的圧力をかけて自発的な退職に追い込む手法が横行していたようです。
コンプライアンス重視の日本企業が選ぶ「飼い殺し」という合理的な選択
しかし、現代のJTCにおいて、あからさまな退職勧奨や不当な配置転換は「パワハラ」としてコンプライアンス違反に直結します。SNSでの告発などの恐れもあるため、会社側が背負うリスクが大きすぎるのです。
そのため、解雇規制が厳しい現在の日本企業は、対象者を無理に追い出すリスクを取りません。その代わり、法的に問題のない範囲で彼らを飼い殺し、「解雇できないなら、せめて他の優秀な社員の引き立て役や、いざという時の人員調整枠として使い回そう」という、消極的でありながらも極めて合理的な戦略をとっています。
辞めさせられない社員を搾取する「3つの合理的な利用価値」
パフォーマンスが低かったり、同僚となじんでいないような社員は厳しく言うとその部署には本来は不要なわけです。しかし、日本企業は社員を簡単に解雇できません。では、そういった社員をどのように利用しているのでしょうか。
私が見聞きした例を解説していきます。
若手エースを引き上げるための「相対評価の生贄」
若手の内は上昇志向が強く、「先輩を抜いてやれ」という気持ちでいる人は多いです。
自信過剰な若手が先輩に生意気な態度をとるケースは多々あります。私自身も一時期は似たような傾向があったため、彼らの心理構造はよく理解できます。
先輩を抜いたかどうかは、仕事をしている中で
- 自分の仕事のスピードが上がった
- より大きな仕事を任せられるようになった
のように自分が成長していったときに、先輩の仕事ぶりと比較することで実感できます。
ただ、より直接的なのはやはり考課や職位です。
私の勤務しているJTCでは相対評価が導入されています。その制度を利用して、上司はキャリアが停滞している社員の考課を抑えて育てたい若手の考課を上げます。そして、毎年ある考課発表の際にそういった若手に

上司
先輩の○○より上だから。
のように言っているはずです。
普通は他の人の考課を言ったりなんてご法度ですが、なんせ要らない社員なので問題ありません。
普通の社員に対してはこんなことできません。
若手からすると、上司から普通は伝えられないようなことを自分には特別に教えてもらえて、かつ目標である先輩を公式の評価で追い抜いたという達成感、優越感で承認欲求が満たされ、モチベーションは最高潮に達するはずです。
このようにして、優秀だったり、お気に入りだったりする若手を育てます。
人員削減時のバッファ。いざという時の「解雇要員」
これはSNSで知った情報ですが、不景気時に人員を減らさないといけないときに、その削減枠に充てるために「とっている」というケースもあるようです。
もはや仲間でもなんでもなく、ただの道具ですね。
これ以外にも人事から人員調整で部署から人を出すように言われることもあります。特定のスキルを持っている人が必要な場合などは、その部署から1人出してくれと、依頼が来るようです。
SEをしていた時には、同僚の何人かがソフトウェアができるということで異動させられていました。
このように、解雇以外でも人を削らないといけない場面があります。こうしたときに、優先的に「ぶつける」球として取っている場合もあります。
他にも、同じ部門の中で隣の課の稼働状況が高くなり数カ月程度のヘルプ人員を要請された時に、優先的にそれに充てて「外に出す」こともありました。そうやって、不要な人間を追いやって必要なメンバーが滞りなく仕事を進められるようにしているわけです。
他の部下への「見せしめ」。言うことを聞かない人間を孤立させ、チームを支配する
上司との関係が悪化し、指示に盲従しなくなった部下に対し、上司は「知らんぷり」という仕打ちを下します。一応の仕事は振るものの、業務遂行に最低限必要なコミュニケーション以外は一切絶つというやり方です。
大声で怒鳴ればパワハラになる時代です。そのため、必然的に何もしないという「知らんぷり」が、上司にとっての解となります。
コミュニケーションが絶たれることで仕事がはかどらなくなり対象者のキャリアは完全に停滞します。その一方で、上司にとっての利用価値として、この陰湿な扱いは周囲の他の部下たちに対する強力な「見せしめ(警告)」として機能します。
職場で露骨に無視され、仕事が前に進まず飼い殺しにされていく同僚の姿を見せつけられれば、他の社員は直感的に理解します。「上司の言うことを聞かないと、自分もあのように孤立させられ、キャリアを潰される」と。
他の部下には上司自ら話しかけに行きますが、ある人には自分からは話しかけない、というように「浮いた」感じになるので気づきやすいと思います。
こんなひどい上司なんていないと思うかもしれませんが、どんな良い人であっても上司になると絶対的権力を手にして必ず腐敗します。このことは以下の記事で解説しています。
大声で怒鳴れば一発でパワハラになる現代のJTCにおいて、言うことを聞かない社員をあえて冷遇する姿を「展示」することは、最も安全で効果的な恐怖政治です。つまり、レールから外れた社員を一人「生贄」として利用することで、チーム全体を萎縮させ、都合よく支配するわけです。
会社にしがみつく「肩たたき候補」の異様な生態
「肩たたき」対象の社員は散々な目に遭うことが分かりました。しかし、それでも会社を辞めずにしがみつく人はいます。こういう人はある程度見ていて分かります。
辞めさせる理由を作らせないための「防衛行動」と末路
まず、打ち合わせには必ず早めに集まります。これは、会社がこの人を辞めさせる理由を作らせないためです。もし、集まりに毎回遅刻するような人なら「勤務態度が悪い」という指摘をすることが可能です。
ただし、早めに集まってもただ席に座っているだけで何もしていないんですよね。完全にモチベーションが無くなってしまっているわけです。
椅子に深く腰を掛けてひどく疲れたように座っていますが、そもそも大した仕事を任されていないので何に疲れているのか不明です。
おそらく、「会社に解雇の口実を与えないよう、常に怯えながら極度の緊張状態を保ち続けていることへの精神的負荷(気苦労)」なのだと思います。
また、会議中には必ず率先して大きな声で発言します。これも同様に、発言が無いと指摘をされて辞めさせる理由にされかねないためです。
モチベーションが死んだ「無表情な挨拶」と周囲の冷遇
挨拶も他の人より大きい声でします。ただ、無表情なんですよね。その挨拶に対して同僚は返したり返さなかったり。
そういう人が挨拶をすると、「返した方がいいのか、返さない方がいいのか迷う」といった感じで、気まずい雰囲気になります。
はたから見ていて、明らかに健全な状況ではないことはわかるのですが、上司はこのことに対して何もしないです。ただ、知らんぷりを続けます。
なかなか精神的に耐えがたい状況だと思います。こんな状況になっても会社を辞めずにしがみつかないといけないのは、幸福からは程遠くまさしく自由に不自由している状態です。
下へ落ちて飼い殺しにされる社員が防衛行動に走る一方で、上へ這い上がろうとする社員もまた、JTCの環境に適応するための「異常な特徴」を備えています。
出世レースを勝ち抜くことも一つの選択肢ではありますが、そこには体力や忍耐といった特有の適応が求められます。この出世レースの実態と、勝てないと悟った時の生存戦略については、以下の記事で解説しています。
道具として消費される前に。JTCから抜け出す合理的な生存戦略
もしあなたが、上司からのコミュニケーションが絶たれたり、理不尽な評価のダシに使われていると感じたら、それは「都合よく使い回される存在」として認定されたサインです。
ここで絶対にやってはいけないのが「現状維持」です。
思考を停止して環境に甘んじれば、結果的にキャリアは完全に停滞します。そして行き着く先は、前述した「会議に異常に早く行く」、「無表情で大きな声で挨拶する」といった、会社にしがみつくための情けない防衛行動に終始するだけの存在です。
合理的な生存戦略は、以下の2つのステップで「会社との物理的・経済的な距離を置くこと」です。
「社内公募」や「転職」で自ら主体的に環境をリセットする
受動的に飼い殺されるのを待つのではなく、自らの意思でキャリアの主導権を取り戻すことが重要です。「社内公募(異動)」や「転職」を活用し、能動的に環境をリセットしましょう。
現在の待遇を維持したまま社内で環境を変える「社内転職」の戦略については、以下の記事で解説しています。
会社員という立場から降りるために、「FIRE」に向けた資産形成を進める
異動や転職で環境を改善するのと並行して、給与収入だけに依存しなくても生きられるよう、会社員という立場から降りるための「FIRE」に向けた資産形成を進めていきましょう。「いつでも辞められる状態」を自ら作り出すことこそが、会社に対する究極の防衛策となります。
会社員という不自由な立場から抜け出すための原点については、以下の記事をお読みください。
まとめ
本記事では、JTCにおける陰湿で合理的な「肩たたき」の実態について解説しました。
この記事のポイントをまとめます。
- JTCは不要な社員を無理に解雇せず、若手の相対評価の生贄や、人員削減時のバッファとして利用する
- 業務は振るがコミュニケーションは絶つという「知らんぷり」で合理的に飼い殺しにする
- しがみつく社員は、遅刻をしないなど辞めさせる口実を与えない防衛行動に終始するが、周囲からは冷遇される
会社というシステムの中で、「解雇できないから仕方なく使い回されるだけの調整弁」に成り下がってはいけません。
もし少しでも「自分が落ち目にされている」と感じたら、手遅れになる前に即座に現状を改善するための行動を起こしましょう。異常な環境をいち早く損切りし、自分自身のキャリアを守り抜くのが重要です。
【手遅れになる前に。JTCからの具体的な脱出戦略】